薬膳の基本 【五味・五性・帰経って?】
こんにちは!今回は、薬膳の基本である、五味・五性・帰経について解説します!
薬膳料理を作りたい、食べたいと思った時、まず何を考えるでしょうか?
たくさんの生薬や体に優しそうな薬膳素材を選ぶ?それとも、とりあえず高麗人参を入れて薬膳スープ?
薬膳鍋の独特なあの香りをかぐと、いかにも体に良さそう!って思いますよね♪
でもね、実は薬膳を食べようと思ったら、必ず考えなきゃいけないことがあるんです、それこそが、
食材の五味・五性・帰経
この3つを理解すれば、あなたもすぐに薬膳マスター!それでは解説していきます!
1.まずは五味を考える
漢方や薬膳の基本理論は、古代中国で生まれた陰陽五行説です。五味とは、様々な食材を、この陰陽五行の考えに従って、5つに分類したものなのです。では何を基準に分類したのか、それは
味と効能の関係です。
まず、酸・苦・甘・辛・鹹(カン、しおからい)の5つに分類します。そしてその5つの味には、それぞれ効能があります。
例えば、酸には汗や尿など、出すぎるものを抑える働きがあります。だから暑い時や頻尿、お腹がゆるい時にはトマトや柑橘類類などの酸っぱいものを食べるのが良い、という具合です。
五味はバランスが大事
ではこの五味を普段の食事でどう活かすのか考えてみましょう。
ある日の献立で、ごはん、みそ汁、ゴーヤチャンプル、サラダがあったとします。これを五味で分類すると、下の表の様になります。
酸が無いですね、また、辛も少ない。そこでサラダにトマトを入れお酢ドレッシングをかけます。さらにみそ汁にネギを入れましょう。
これでバランス良くなりましたね。現代の栄養学では、五大栄養素はバランス良く!なんて言いますが、漢方という伝統医学の角度で見た栄養学に基づく分類が、この五味なんだとご理解ください。
日本の伝統食にも五味
日本の伝統食といえば寿司です。実は寿司にも五味がバランスよく含まれています。
酸:すし酢
苦:緑茶
甘:米
辛:わさび
鹹:海苔
シャリに酢飯を遣うのも、わさびを入れるのも、茶を一緒に飲むのも、全て五行の法則に基づいています。冷蔵庫など無かった時代、今とは比べ物にならないくらい、海鮮には寄生虫や食中毒のリスクがありました。そんな寿司を安全に食べられるように考えられたのが、五行に基づく薬膳の智慧だったのですね。
おすすめの薬膳本
でも、今日食べる食材が五味のどれに当てはまるのかなんて知らん!とお思いの方もいるはずですよね(^-^;
最近では、薬膳本コーナーに、色々な食材の五味が分かる本がたくさん置かれていますので、ぜひお好きなものを1冊買ってみることをお勧めします。
ちなみに僕が使っているのはこちらです。
2.体調管理の強い味方、五性!
陰陽五行説にもとづいた薬膳の基本、2つめは五性です。
五性とは、簡単に言うと、体を温めるものか、冷やすものか、ということ。
寒性:体を強く冷やすもの
涼性:体を少し冷やすもの
平性:寒熱に偏らない
温性:体を少し温めるもの
熱性:体を強く温めるもの
例えば、カゼをひいた時には生姜で体を温めたり、夏の暑い日にはスイカで熱を冷ましたりしますよね。これはみんな五性の働きなんです。
なぜ北海道では味噌ラーメン、九州では豚骨ラーメンが食べられているのか?
北海道の名物の一つに味噌ラーメンがあります。味噌は温性ですね。また同じく北海道の郷土料理、ジンギスカンで食べられる羊肉。羊肉は体を強く温める熱性の食材です。
一方の九州では豚骨ラーメンが主流です。豚は体を冷やす涼性の食材。また沖縄でよく食べられるゴーヤチャンプルーに使われるゴーヤ、豆腐も涼性の食材です。
このように、暑い地域・寒い地域で伝統的に食べられている料理には、五性の考え方が応用されているんです。
漢方薬の重要な効能の一つに、体を温める/冷やすというものがあります。平常時の体温を保つことは、体が免疫機能を保つための大切な条件です。薬膳で気候や体調に合わせて五性を調節するというのは、まさに体調管理するというのと同義なんですね!
3.薬膳の極意、帰経
薬膳の基本、最後は帰経(きけい)です。
帰経というのは、体のどこに効くのか、ということです。
五行説の理論に基づいて、重要な臓器を5つに分類します。五臓六腑と言いますよね?そう、アレです。
肝・心・脾・肺・腎の5つの臓器、これが生きていくための重要な役割を担っているのです。
そしてこの五臓にはそれぞれ役割があります。肝は血液の流れをコントロールし、心は精神活動をつかさどる。脾は食物から栄養を吸収し、肺は水分代謝を調節する。そして腎は生命力の源であり、若々しさを生み出す。。。
???。。。中医学の考え方に慣れていないと、何のことだか分からないですよね。脾臓が栄養を吸収?小腸じゃないの?肺は呼吸器でしょ。水分代謝と何の関係が??
私も中医学を学び始めた時は、こういった疑問を抱いていました。でも、中医学を学ぶにつれて、2000年も昔にできたこの理論が、とても合理的だという事が分かったんです!
五臓の働きについては、また次の機会に解説するとして、ここでは、中医学の五臓と現代医学でいう臓器は、名前は同じでも全く別のものを指していると思っておいてくださいね。
さあ、話を薬膳に戻します。ともあれ、五臓という考えに基づいて、食べ物がそれぞれの臓器に働きかけるんだ、ということを覚えておいてください。
ちなみに、なぜ”帰経”といういうのか?ですが。これは経絡(けいらく)と関係しています。
中医学では、人間の体には、12本の”気の流れる道”が通っていて、これを経絡と呼んでいます。鍼治療やマッサージで押す”ツボ”は全てこの経絡の線上にあって、ツボに刺激を与えると、その刺激がこの経絡を通って治したい箇所を根本から治してくれる、というものです。
そしてこの12本の経絡が、実は五臓六腑と繋がっているのです。(5+6=11なんですが、心包という目に見えない臓器を便宜上付け加えて12の臓器としています。中医学理論も完璧ではない!?笑)
薬膳も同じ原理です。食べたものが、経絡を通ってある臓器に効くんですね。なので帰経というのです。
なぜ、ひな祭りにちらし寿司を食べるのか?
桃の節句、ひな祭りに食べるものと言えば、ちらし寿司ですね。でもなぜこの日にちらし寿司を食べることになっているのでしょうか?文化的な背景もありますが、ここでは薬膳の視点から考えてみましょう。
春という季節は、五行説で言うと、”木”に属します。その木に属する五味や五臓を見ると、”酸”、”肝”ですね。ちらし寿司に使われている酢飯は、春のグループに属する食材です。
続いて見ていきましょう。ちらし寿司と一緒に食べられるものとして、ハマグリのお吸い物、がありますね。ハマグリの五味は”甘”で帰経は”肝”です。さらに、これもひな祭りによく食べられる菱餅ですが、五味と帰経は”甘”・”脾”となっています。
酸・肝は春のグループだけど、甘・脾は違います。どういうことでしょうか?実はこれも説明がつくんです。
五行説の考え方では、木が強くなると対角にある土が影響を受けます。ちょうど木の根が張り過ぎて、土の養分を吸い取ってしまうように。
春という季節も同じです。木が強くなって土を弱らせてしまうので、土に属するものを食べましょう、というのが薬膳の考え方なんですね。
薬膳はこじつけ?
ここまで読んでも、なんだか分かったような分からないような。。。という感じではないでしょうか。
それならフツーに「こういう栄養が入っているからこの食材が良い!」って言われた方が納得感ありますよね。
でもね、ちょっと待ってください。この五行の理論は2000年以上前に生まれ、現代まで薬膳の理論として生き残ってきたわけですよ。この数十年間で、○○健康法だとか、○○ダイエットというものが出ては消えていきましたが、どのくらい生き残っていますか?
効果が無いものは淘汰されていくんです。その中で2000年も生き残っている薬膳というものが、本当にただのこじつけなのでしょうか?
実は一見こじつけに見える薬膳の考え方も、ちゃんと現代医学的も説明ができるんです。
春というのは、冬から徐々に暖かくなっていく季節です。気温が上がると気圧も高まっていきます。気圧が高まると血流が悪くなり、むくみが生じます。春になると脚がむくんだり、頭痛がしたりという人も多いと思います(一部の頭痛は、脳の血管のむくみが原因だと言われています)。
むくみを取るためには、血流の改善が必要。血流を改善するのは、そう肝の働きです!
そして、春と言えば花粉症の季節。花粉症というのはアレルギーです。アレルギーとはいわば免疫疾患のこと。免疫機能をつかさどるのは腸なんですね。私たちの身体の免疫細胞の約70%が腸にあると言われています。
腸、つまり消化の働きを持つのは、中医理論では脾なんですね!だから、肝と脾が大事になってくるんです!
まとめ
いかがでしたか?五行とか五臓とか、一見古臭い、ややもすると迷信とでも思われがちな理論ですが、実は2000年の歴史を持つれっきとした医学体系であり、それを応用したものが薬膳なんです。
漢方や中医学の理論を身に付ければ、日頃の食事を薬膳にしたり、自分で漢方薬を選ぶことができるようになります。
そんな役に立つ情報をこれからも発信していきたいと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!