漢方薬の「番号」のナゾ【いつから?どんな意味が?】
葛根湯は「1」、八味地黄丸は「7」、、、
ドラッグストアに売っている漢方薬のパッケージをよく見るとこんな番号が書いてあることに気づきませんか?
実は漢方薬にはそれぞれに番号が振られているんです。それはドラッグストアで買える「OTC漢方薬」も、病院で処方される「医療用漢方薬」も番号は同じ。ツムラ・クラシエといったメーカーで多少の違いはあるようですが、大体共通しているようです。
漢方薬をよく飲むと、「この番号っていったい何だろう?」と疑問に思うこともないでしょうか?
漢方薬にあって西洋医学には無い、この”製品番号”。多くの医療従事者も、意外に知っているようで知らないこの漢方薬トリビアについて調べてみました。
1.番号を付けたのは「漢字を書くのが面倒だったから!?」
漢方薬になぜ番号が付記されるようになったのか?実は定かなことは分かってないのですが、 日本薬科大学教授の新井一郎氏の考察によると、以下のような背景が考えられるようです( 日本薬史学会『薬史学雑誌』の「日本の漢方製剤産業の歴史」(薬史学雑誌 2015;50:1-6.))
今から半世紀以上前の1957年、小太郎漢方製薬が初めて漢方エキス製剤を販売しました。その後1974年には津村順天堂(現ツムラ)が医療用漢方製剤の販売を開始、以降複数のメーカーから漢方エキス製剤が売り出されました。
多くの医療用漢方製剤の発売に伴い、医師による漢方処方も増えていったのですが、ここである問題が起きます。
漢方薬の名称には、難しい漢字や普段使わない漢字が多く使われており、処方医が正確に処方箋を書くのに思わぬ苦労が生じたのです。その結果、多くの処方医から「製剤名が書けない」「書くのが面倒」という声が挙がったそうです。これに対しメーカーは漢方製剤名のハンコを作って配布もしたそうですが、それもあまり便利ではなく、定着しなかったのだとか。そんな中、当時まだメーカーの社内だけで使われていた製品番号だけを書く医師が増えていったのです。いつしかそれが医師の間で定着し、漢方製剤番号が使われるようになりました。「日本で漢方エキス製剤が広く使われるようになった最大の要因として、漢方製剤番号を付けたことが挙げられる」と新井氏は指摘しています。
漢方薬は2000年近く昔に作られたものもあり、名前が長いもの、難しい漢字を使うものも少なくありません。そんな漢方薬が普及した理由の一つに、”番号”があったとは、あなどれませんな。。。
番号が付けられる背景は分かりました。ではそれぞれの番号は、どのように決められたのでしょうか?
2.番号に「特に意味はない」
まずは漢方薬シェア日本ナンバーワンのツムラのHPを見てみました。
Q. ツムラの製品番号の付け方には何か意味がありますか。
A. 特に意味はありません。(おおむね、承認申請順といったところです。)
ツムラHP「よくあるご質問」より
「特に意味はありません」って。。。
3.研究者の「実験ノート」の番号だった!
それでは納得できないので、色々調べてみました。各社の番号は確かに申請順など、特に意味は無さそうでしたが、シェアトップのツムラについては、日経ドラッグインフォメーション(日経ID)に関連の記事がありました。
日経IDの記事によると、ツムラの漢方薬の製品番号は、同社の研究者だった小根山隆祥氏が実験ノートに付けていた番号だということです。小根山氏のインタビュー記事に以下の記載があるそうです。
また現在の漢方製剤の製品番号は、当時、研究していた時の私の実験ノートにつけていた番号なのですよ。
一番は葛根湯、二番は、葛根湯加川芎辛夷、三番は乙字湯。そして四番は私は桂枝加芍薬大黄湯としていたのですが、四は死番だということで欠番となり、五番が安中散……と続くわけですね。ちなみに桂枝加芍薬大黄湯は現在一三四番です。それが今ではカネボウさんでも小太郎さんでも各社全部が同じ番号を使っています。
(略)
順番が系統的ではなくバラバラだから覚え難いと皆さんからよく文句を言われたものです(笑い)
『月刊漢方療法 2003;11:568-76. 』
どうやらこれが真相のようですね。それにしても、いち研究者の実験ノートに振られていた、特に意味のない番号が、現在の多くのメーカーの漢方薬に使われている番号だったとは、意外ですね笑。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、漢方好きとしては知っていると自慢できる(?)漢方トリビアについて紹介しました。
・漢方薬についている番号は、漢字を書くことが面倒くさいことから普及した。
・番号はツムラの研究者の実験ノートがもとになったもので、特に意味はない。
これを機に、ドラッグストアに置いてある漢方薬を見て、研究者の努力に思いをはせてみるのもいいかも知れませんね笑
最後までお読み頂きありがとうございました。