【○○湯?○○丸?○○散?】知ればオモシロ漢方薬の名前の話

こんにちは!今回は、漢方薬の名前のお話です。

葛根湯、当帰芍薬散、六味丸などの漢方薬の名前には「~湯」とか「~散」、「~丸」などという字が付いていますが、意味があるのをご存知ですか?

漢方薬の性質とも関わるこの名前のナゾ、知れば漢方薬にますます興味を持つと思いますよ!

1.○○湯は煎じ薬

漢方薬の名前で最も多いのが、○○湯です。葛根湯麻黄湯半夏厚朴湯等々。一般的に売られている多くの漢方薬に、この”○○湯”という名前が付けられています。

実はこの”湯”というのは、中国語で”スープ”のことを指しています。つまり生薬を煎じたスープのことなんですね。

漢方薬の材料である生薬は、草の根・葉・茎・樹皮などがほとんど。その生薬から薬用成分を抽出するのに最も適した方法が、お湯で煎じるということなんでしょう。

また、お湯で飲むということはもう一つの意味があります。体を温めるということです。

多くの漢方薬は免疫力を高めるために”体を温める”ということに主眼を置いています。漢方薬の成分の力で温めることに加え、お湯で飲むこと自体にも意味があるのです。

今では”葛根湯”と書いてありながら、錠剤となっているものも数多く売られています。その一方で、漢方薬最大手のツムラはお湯で溶かすエキス製剤しか扱っていません。実はこれ、漢方薬をお湯で飲む、ということに対するツムラのこだわりなんですね。さすが漢方最大手!

○○湯と名のついた漢方薬を飲むときは、ちょっと面倒ですが、お湯で溶かして飲むことをお勧めします!

2.○○散は生薬をそのまま飲む!?

次は○○散という漢方薬です。

生薬を刻むときに使われる「薬研」

二日酔いに効くと言われる五苓散(小林製薬の「アルピタン」です)、ダイエット薬としても売られている防風通聖散(これも小林製薬の「ナイシトール」です)生理痛や更年期障害などに良い当帰芍薬散加味逍遙散など、○○散という漢方薬も多く売られています。

この「散」というのは生薬を細かく砕いて粉末とし、それを漢方薬として飲むものです。

薬研(やげん)と呼ばれる道具で薬材をすり潰し、その粉末をそのまま飲むのです。

水に成分が溶けにくい生薬が含まれているものが、この飲み方に適していると言われています。

水に溶けにくいので、胃腸での吸収がされにくい分、食物繊維などもダイレクトに摂れるので、それも含めた薬効も期待できるのがこの○○散の特徴です。

3.○○丸は蜜の味?

最後は〇〇丸です。

八味地黄丸(大鵬薬品の「ハルンケア」です)、婦人科薬として有名な桂枝茯苓丸などがあります。あと、漢方薬ではありませんが、正露丸もこの仲間ですね。

この○○丸という漢方薬は、生薬を粉末にして、はちみつなどで固めて丸薬としたものです。

味のまずいものがこの方法で作られます。(漢方薬はだいたいまずいのですが、中でも特にまずいものがこの方法で作られます。あとまずい薬が飲めない子供向けの薬とか、子供の夜泣きの薬として有名な「宇津救命丸」もこのこれですね!)

あとは、この丸薬は消化・吸収が遅いので、あえてゆっくり効かせたいものも多いです。

4.まだまだある漢方薬の剤型

このように、〇〇湯、〇〇散、〇〇丸が主な漢方薬の種類ですが、実はこれ以外にもまだあります。

冷水で飲む○○飲、○○飲子

温清飲(うんせいいん)という薬があります。これは皮膚炎・口内炎などに効く薬で、体の中の炎症を抑える効果があります。

当帰飲子(とうきいんし)も皮膚の薬です。こちらも皮膚の炎症に効くのですが、血色が悪くて肌が乾燥してカサカサしてる人なんかは温清飲よりこの当帰飲子の方が向いていたりします。

この二つの薬、どちらも肌の炎症に効くのですが、共通点は「体を冷やす」ことなんです。だからお湯で飲むよりも、冷水で飲んだ方が効きが早い。そんな薬には○○湯ではなくて、○○飲、○○飲子という名前が付けられているそうです。

飲(いん)と飲子(いんし)の違いは一説によると、飲子の方が少量ずつ飲んで様子を見る、というニュアンスが込められているようですが、定かではありません。

ちなみに、~子というのは中国語の特徴で、小さいものや親しみをこめて付けられる接尾語です。例えば、椅子、扇子、帽子、様子などがありますね。当帰飲子も少量ずつちびちび飲むことから、”飲子”とつけられたのかも知れませんね。

薬酒や軟膏にも漢方薬がある?

まだまだあります、漢方薬の種類。

薬酒として有名な薬用養命酒、これも立派な漢方薬ですね。

また、数は多くないですが、漢方の軟膏(塗り薬)もあります。

紫雲膏(しうんこう)はひびやあかぎれ、そして痔にも効く漢方の軟膏です。江戸時代に世界で初めて全身麻酔を使った手術を成功させた名医・華岡青洲が作った薬で、代表的な漢方軟膏として、今日まで受け継がれています。

「紫雲膏」と「中黄膏(ベルクミン)」

また、ベルクミンとして販売されているのは、中黄膏(ちゅうおうこう)という漢方の軟膏です。消炎作用のある生薬が配合され、湿疹、あせも、かぶれ、やけどなどに効果がある薬として長年販売されています。

○○散料とは?

五苓散”料”の意味とは?

○○散と名の付く漢方薬をよく見ると、「五苓散料」、「当帰芍薬散料」といったように「○○散料」という字が付いています。この料とはどんな意味なのでしょうか?

○○散とは、生薬を粉末にしてそのまま服用するものだと説明しましたが、実は現在薬局で売っている漢方薬はそのようにはなっていません。

エキス剤といって、生薬を煎じたものをフリーズドライにして顆粒にしているんです。まるでインスタントコーヒーですね。従って、当帰芍薬「散」といっても、本来の「散」ではありません。当帰芍薬散という名前ながら、「散」剤ではないので、煎じてフリーズドライにしたということを表すために、「散料」と書くようになったのです。

フリーズドライ製法は、安全性や効率性の面で技術が確立されているため、多くの漢方薬メーカーがエキス剤として漢方薬を製造しています。漢方薬の薬効は本来、剤型も重要な意味を持つため、「散料」でいいのか?という疑問もありますが、現代のように大量生産・大量消費が必要な時代においては、多くの方に漢方薬を届けるためには仕方無いのかもしれませんね。

まとめ

いかがでしたか?

普段何気なく眺めている漢方薬の名前には、実は剤型や飲み方といったその薬の特徴が込められていたのですね。

次回は漢方薬の名前に関するトリビア第二弾!そもそも漢方薬の名前はどうやって付けられたのか?について解説したいと思います!

最後までお読み頂きありがとうございました。

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