カゼに効く漢方薬【葛根湯】
こんにちは!今回は日本で一番有名な漢方薬【葛根湯】の使い方について解説したいと思います。
日本でと言ったのは、実は漢方の本場中国ではあまり有名じゃないからなんですね。その理由については、こちらの記事(参考:中国では有名じゃない!?【知られざる葛根湯の歴史】)をお読みください!
さて、カゼと言えば葛根湯ですが、どんなカゼにも効くわけではないんです。ここでは葛根湯が聞きやすいカゼの種類と、正しい飲み方について解説します!
1.葛根湯には「桂枝湯」が入ってる!?
まずは葛根湯がどんな生薬でできているのか見てみましょう。
葛根湯の構成生薬
・葛根(かっこん)
・麻黄(まおう)
・桂皮(けいひ)
・大棗(たいそう)
・生姜(しょうきょう)
・芍薬(しゃくやく)
・甘草(かんぞう)
全部で7つの生薬でできています。「葛根湯」という名前がついているからには、葛根が重要なんですが、これは葛(クズ)というマメ科の植物の根っこです。そして麻黄。これは発汗を促します。
桂皮はシナモン、大棗はナツメ、生姜はショウガ、どれも薬膳鍋に入っていたりと、普通に食べられるものですね。
芍薬は「立てば芍薬 座れば牡丹、歩く姿は百合の花」の芍薬です。余談ですが、私が最初に聞いたのは「立てば食欲 座ればふとん、歩く姿はブリの腹」というものでした。こっちがオリジナルだとずっと思っていたので、本来の言い方があると知った時はとても恥ずかしかったです(^-^;
葛根湯に入っている芍薬は根っこの部分です。最後に甘草ですが、これは非常に多くの漢方薬に配合されています。一説によると日本の漢方薬のおよそ7割に配合されているのだとか。漢方薬にとってなくてはならない生薬です。これ自体に強い薬効は無いのですが、他の生薬成分の働きを強めたり、数種類の漢方薬の成分をなじませたりといった作用があるようです。
葛根湯=「桂枝湯」+葛根+麻黄
【桂枝湯】の記事(参考:カゼに効く漢方薬【桂枝湯】)で解説しましたが、桂枝湯は多くの漢方薬のベースとなっている重要な処方です。実は葛根湯もその一つで、桂枝湯がベースとなっています。
桂枝湯も葛根湯も、「カゼの初期に」飲むと効く漢方薬です。では、2つの違いは何でしょうか?
2.「汗をかかないカゼ」の初期に葛根湯
葛根湯の効能・効果には次のように書いてあります。
●葛根湯の効能・効果
体力中等度以上のものの次の諸症:
感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み
「ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A 説明文書」より
ここでのポイントは次の2つです。
・体力中等度以上のもの
・汗をかいていないもの
ベースとなっている桂枝湯の効能・効果はどうかというと…
●桂枝湯の効能・効果
・体力虚弱で
・汗が出るもの
つまり、桂枝湯と葛根湯で、向いている症状には次のような違いがあります。
体力の有無 | 発汗の有無 | |
桂枝湯 | 体力虚弱 | 汗をかいている |
葛根湯 | 体力中等度以上 | 汗をかいていない |
体力中等度以上とは・・・?
漢方薬の説明書の効能・効果の欄には、「体力虚弱で」、「体力中等度で」といった文言が書いてあります。これはどういう意味なのでしょうか?
漢方の理論で病気を診断する際に、「虚実」という考え方があります。これは現代医学的に言うと、病気に対する抵抗力や症状の強さなどを現しています。 同じカゼでも、虚タイプのカゼか、実タイプのカゼかによって、治し方も変わってきます。でもあなたは虚ですか?実ですか?と聞いても、漢方の専門家でもない限り分かりません。だから一般の人でも分かりやすいように、体力虚弱とか充実してなどという表現をするように決められたんです。
虚実のレベルには5段階あって、漢方薬メーカー各社はこの基準を使って薬の効能・効果の欄に記載しています。
葛根湯は、「体力中等度以上」なので、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴの人が対象ですね。
体力があると「汗をかかない」?
次のポイントである「汗をかいていないもの」ですが、これは症状の強さと関係しています。
カゼの原因となるウイルスが体内に侵入すると、私たちの免疫機能は、ウイルスを排除しようとして熱を出します。ウイルスは殺菌剤では死にませんが、40℃近くの高温になると働きが弱まるからなんです。しかし、汗をかいてしまうと、せっかく発熱しても、汗と一緒に体温が逃げてしまいます。そこで体は汗腺を閉じて汗を出さないようにするのです。もし体力が無い場合は、汗腺を閉じる働きが弱いので汗が漏れ出てしまいます。だから体にあまり負担をかけずに温める桂枝湯が良いのです。
一方で、汗をかいていない場合は、汗腺を閉じる力があり、体力もあるということなので、体を強く温める作用がある麻黄が入った葛根湯がぴったり、ということなんですね。
3.ドーピング違反になる!?葛根湯
スポーツをやっていればご存じかも知れません。葛根湯はドーピングの禁止薬物として禁止されています。
その理由は麻黄が入っていることです。
葛根湯は、「桂枝湯」+葛根+麻黄です。葛根はカゼの時に体のふしぶしが痛くなるのを緩和してくれます。
ここで麻黄の働きが重要になってきます。麻黄はエフェドリンという成分が含まれますが、このエフェドリン、覚せい剤として用いられるメタンフェタミンという物質と構造が似ているため、非常に強い興奮・発汗作用があるのです。この麻黄の発汗作用で、急激に熱を上げてウイルスに対する抵抗力を高めてくれるのが、麻黄の役割なんですね。
なお、スポーツの国際大会などに出る場合は葛根湯は避けた方が無難ですが、そうでなければ、通常の使用の範囲内であれば覚せい剤のような影響はありませんので、ご安心を♪
まとめ
今回は葛根湯の特徴について解説しました。
1.「桂枝湯」をベースに作られた、万能カゼ薬葛根湯
2.「汗をかいていない」カゼのひき始めに有効
3.強い興奮作用があるので、ドーピングには注意!
合わないカゼもありますが、それでも「カゼと言えば葛根湯」と言われる優秀な漢方薬。一家にひと箱、ぜひ常備してみてはいかがでしょうか。
最後までお読み頂きありがとうございました。